最近、「ジムニー女子」という言葉をよく耳にする。
四角い車体とアウトドアっぽい雰囲気の組み合わせが人気で、SNSでも写真がたくさん並ぶ。
そして、そんな流れの中でふと気づいたことがある。
ジムニー女子、ヒール&トゥがほとんどできない説。
もちろん、これは批判じゃない。
むしろ、ちょっと愛を込めた“気づき”だ。
というか、そもそも一般ドライバーの中でヒール&トゥ(以下ヒールトゥ)を使う人なんてほぼいない。
だけど、ジムニーって“ただの車”じゃないからこそ、この話題が妙にしっくりくるのである。

■ そもそもヒール&トゥとは?(ざっくり説明)
ヒール&トゥというのは、
減速しながらクラッチを切り、ブレーキを踏みつつ同時にアクセルをあおり、スムーズにギアを落とす技術
のことだ。
プロドライバーや峠好きの人がよく使うアレである。
これ、地味に難しい。
クラッチのタイミング、アクセルのあおり、ブレーキの力加減。
全部がピッタリ一致しないと“ガリッ”としたショックが出る。
「マニュアルの美学」
「機械と会話する瞬間」
なんて言われることもある、まさに“職人技”の世界。
で、そんな技術をジムニー女子ができるのか?と言われると——
ほとんどできない。
ほぼ間違いなくできない。
でも、そこがまたいい。

■ ジムニー女子がヒールトゥを使わない理由①
そもそもマニュアルに乗ってない
これが最大の理由。
ジムニー=マニュアルのイメージが強いが、最近はオートマ率が非常に高い。
特にジムニー女子の“入り方”はこうだ。
「見た目がかわいい」
「四角いデザインが好き」
「アウトドアっぽい」
「写真映えする」
この流れで購入するケースでは、
運転そのものに強いこだわりがある人より、
デザインに惹かれて選ぶ人の方が明らかに多い。
だから、最初からMTに触れたことがない人も多い。
当然、ヒールトゥは縁遠い。
■ ジムニー女子がヒールトゥを使わない理由②
そもそも実用シーンがない
ジムニーは“本気で山を走る車”だけど、
SNSで見かけるジムニー女子は大体、
・ショッピングモールの駐車場
・カフェ前
・海沿い
・ちょっとしたキャンプ場
このあたりが主な生活圏だ。
ヒールトゥが必要なシーンなんて皆無である。

■ ジムニー女子がヒールトゥを使わない理由③
クラッチ操作に慣れる前に心が折れる
もし勇気を出してMTモデルを選んだとしても、
まずつまづくのがクラッチ操作だ。
信号のたびにエンスト。
半クラのタイミングが分からない。
アクセルのあおりが怖い。
後続車にプレッシャーを感じる。
この段階で「運転むずくない?」となる。
そんな状況で、
「減速しながらブレーキ踏んで、同時にアクセルあおって、ギアを落とす」
なんて余計な作業をする余裕はない。
ヒールトゥどころではない。
■ でも、ここからが本題。
ヒールトゥができないジムニー女子、だからこそ可愛い。
これは偏見や悪意じゃない。
むしろ逆。
“ジムニーに対して素直”だからこそ、惹かれるものがある。
ジムニーって、
技術を競うための車じゃなくて、
楽しむための車だ。
・下手でもいい
・クラッチぎこちなくてもいい
・坂道発進ビビってもいい
・エンストしてもいい
むしろ、そこにしかない“魅力”がある。
■ ヒールトゥができないのにジムニーを選ぶというロマン
よく考えると不思議な話だ。
運転に自信がある人向けのような“無骨な車”を、
運転技術とは関係なく「かわいい」という理由で選ぶ。
これって、すごいことじゃないか?
好きだと思ったものを、
技術も経験も関係なく“選ぶ勇気”。
そこにこそ、
ただ写真映えを超えた真価がある。
■ ジムニー女子へ。
ヒールトゥなんてできなくていい。
ヒールトゥができるから偉いわけじゃない。
できないからジムニー乗りじゃない、なんてことは絶対にない。
むしろ、
「できない自分のまま、好きな車に乗る」
という姿勢こそ、
一番ジムニーらしい生き方だ。
ジムニーという車は、
“背伸びしなくていい自由”を与えてくれる。
ヒールトゥできなくても、
クラッチぎこちなくても、
エンストしても、
道を間違えても、
それでも前に進んでいく車なのだ。
だから、安心してほしい。
ヒールトゥなんて、できなくていい。
あなたがジムニー女子であることには、何の変わりもない。

■ 最後に
ジムニー女子を見ていると、
運転技術よりも、
スペックよりも、
効率よりも、
“好き”という気持ちが人生を動かす
という当たり前のようで忘れがちな真実を思い出させてくれる。
ヒールトゥできない?
それでいい。
できないまま笑っていればいい。
ジムニーは今日も、
そんなあなたをのせて前に進むのだから。



